なぜ特定の食材が薬の血中濃度を跳ね上げてしまうのか。その鍵を握るのが、主として小腸や肝臓に存在する薬物代謝酵素である。臨床薬理学の研究が明かすメカニズムによれば、フラノクマリン類はこの代謝酵素であるシトクロムP450(CYP3A4)を強力かつ不可逆的に阻害する。通常であれば酵素によって分解されるはずの薬剤が、そのまま血管内へ大量に流れ込むことになるのだ。
高血圧治療の第一選択薬として広く処方されているカルシウム拮抗薬(アムロジピンやニフェジピンなど)は、まさにこの酵素によって代謝される代表格である。CYP3A4がブロックされると、薬の血中濃度が通常の数倍にまで跳ね上がり、激しい頭痛、顔のほてり、さらには脈拍の異常増加や急激な低血圧ショックを引き起こす危険性がある。この酵素阻害作用は、食品を口にしてから数日間にわたって持続することもあるため、服薬時間をずらすだけでは防ぎきれない。