私たちが起きている間、脳内では「アデノシン」と呼ばれる疲労物質が刻一刻と蓄積していく。この物質が神経細胞にある特定の「アデノシン受容体」と結合することで、脳は「そろそろ休む時間だ」と判断し、強い眠気を生み出す仕組みだ。人間が生きるうえで欠かせない安全装置と言える。
ここに投入されるのがカフェインである。分子構造がアデノシンと酷似しているカフェインは、先回りしてアデノシン受容体にピッタリとはまり込む。これにより疲労物質の結合がブロックされ、脳は疲労を感じにくくなる。いわば脳を一時的に騙して覚醒感を作り出している状態だ。医学文献データベースのPubMedに登録されている多数の論文や、ハーバード大学医科大学院をはじめとする世界的研究機関の発表でも、この分子レベルのブロック構造は長年実証されてきた。現代の睡眠科学においても、覚醒をもたらす基本原理として揺るぎないポジションを占めている。