彼がなぜ「嘘」をつき続けるのか。その答えは、彼が抱える切ない過去と切っても切り離せない。夢野幻太郎という存在の根底には、病院のベッドで眠り続ける一人の「親友」の存在がある。
作中で徐々に明かされてきた真相によれば、実は「夢野幻太郎」という名前自体が、昏睡状態にある本当の親友のものであり、彼自身はその名を借りて生きている作家に過ぎない。親友が書きたかった物語、遺したかった言葉、そして彼が見るはずだった世界――それらを代わりに形にし、いつか親友が目を覚ました時に「これは全部嘘だよ」と笑い飛ばすために、彼は嘘の物語を紡ぎ続けているのだ。
「嘘の中にしか本気はない」と言わんばかりの彼の生き様。その嘘は、誰かを傷つけるためのものではなく、大切な人を繋ぎ止め、残酷な現実から自分と仲間を守るための優しき盾にほかならない。