アニメツーリズム市場が成熟期を迎えるなか、国内外のファンから熱狂的な支持を集めるスポットには明確な共通項がある。それは、作中の緻密な背景描写と、現地に息づく歴史や景観が見事に調和している点だ。大手観光メディアや舞台探訪アーカイブの調査でも、アニメ聖地おすすめの上位には新旧の名作が名を連ねる。
近年、特に爆発的な動員を記録したのが北海道エリアだ。『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』の舞台となった函館市では、特別史跡五稜郭や函館山ロープウェイ、赤レンガ倉庫群を巡るファンが殺到。同じく北海道を舞台にした『ゴールデンカムイ』の小樽・網走エリアとともに、1泊2日から2泊3日の広域周遊ルートを組む旅行者が定着している。現地観光協会の集計によると、映画公開以降の関連施設利用者は前年比130%超を記録し、その熱気は現在も衰えていない。
一方、いわゆる「レジェンド級」と呼ばれるクラシックな名所の現在地も興味深い。2000年代後半に聖地巡礼のパイオニアとなった『らき☆すた』の埼玉県久喜市(旧鷲宮町)鷲宮神社や、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の埼玉県秩父市は、放送から年月が経過した今もなお、地域住民とファンが顔見知りになるほどの強固なコミュニティを形成している。
また、『君の名は。』の東京都新宿区・四ツ谷(須賀神社階段)や岐阜県飛騨市、『SLAM DUNK』の江ノ島電鉄・鎌倉高校前踏切は、世界中からのインバウンド客が途切れないグローバル聖地となった。公式のアニメ聖地一覧や有志による高精度な聖地巡礼マップを手元に、スマートフォンの位置情報と照らし合わせながら歩くスタイルは、現代の旅行文化において完全に一般化している。