『演歌みち』がリリースされたのは1985年7月21日。当時の歌謡界はアイドル全盛期からニューミュージックへと音楽シーンの多様化が進んでいた激動期でした。その中で、正統派演歌の底力を世に見せつけたのが本作です。
楽曲を手掛けたのは、昭和から平成の演歌界を牽引した作詞家の吉岡治氏と、哀愁と情熱を併せ持つメロディの名手・岡千秋氏、そして編曲の名匠・斉藤恒夫氏という最高峰の布陣でした。制作当時の現場記録によると、吉岡氏は松原のぶえという歌手が持つ「芯の強さと、どこか母性を感じさせる温かい響き」を最大限に引き出すため、推敲を重ねて言葉を紡ぎ出したとされています。
岡千秋氏による旋律は、七五調を基本としながらも、サビで一気に感情を解き放つダイナミックな跳躍が特徴です。哀愁を帯びた前奏から松原の伸びやかな第一声が響いた瞬間、聴き手を一気に物語の世界へ引き込む構成美は、緻密な計算と職人技の結晶といえます。