尾ヒレの役割は、前進するための運動器官にとどまらない。過酷な水中世界を生き抜くため、一部の魚種は尻尾を極めて特殊な用途へと適応させてきた。
たとえばオナガザメは、体長の半分近くを占めるムチのような長大な尾ヒレを勢いよく振り下ろし、発生する衝撃波や直接の打撃で小魚の群れを気絶させて捕食する。また、浅瀬の砂地で暮らすエイの仲間には、尾の先端に強力な毒棘を備えて外敵を威嚇・撃退するものが存在する。さらに、繁殖期に色鮮やかな尾をアピールして求愛を行う淡水魚も少なくない。
メディアでもおなじみのさかなクンがテレビやイベントで熱弁するように、魚たちの尾ヒレには単なる水中推進を超えた生き残りへの知恵が凝縮されている。世界的人気を博した映画『ファインディング・ニモ』での愛らしいカクレクマノミの泳ぎや、壮大な海洋の営みを描いたドキュメンタリー『ディープ・ブルー』に登場する深海魚たちの異形な尾も、環境に適応した必然の姿なのだ。