アーケード内に足を踏み入れると、英語、中国語、韓国語が飛び交い、アジア系を中心とした旅行者で通路が埋め尽くされています。黒門市場の現在の評判は、訪れる人の属性によって真っ二つに割れています。
外国人観光客へのヒアリングでは、「目の前で好きな海鮮を選んで炭火で焼いてくれるライブ感が最高」「自国で同じレベルの和牛を食べたら1万円以上するからお得だ」といった肯定的な意見が多数を占めます。彼らにとって黒門市場は「生鮮食料品を買う場所」ではなく、「日本の食文化を短時間でエンタメとして満喫するテーマパーク」として機能しています。
一方で、痛烈なのが黒門市場地元民の反応です。長年この地域で暮らす住民や、かつて買い出しに通っていた料理人からは冷ややかな声が目立ちます。
「正月用の数の子や鯛を買いに来るのが恒例行事やったけど、今は人が多すぎて歩かれへんし、値段も近所のスーパーのほうがずっと良心的。もう普段使いで行く場所やなくなった」(近隣に住む60代主婦)
「仕入れ先として通っていた老舗が観光客向けの総菜店に貸し出されて廃業してもうた。大阪の食文化を支えた誇りはどこへ行ったんやろな」(道頓堀の割烹店主)
地元客の足が遠のいた結果、周辺のスーパーマーケットや、同じミナミエリアでも少し離れた木津卸売市場へ日常の買い出し先をシフトする動きが定着しています。観光地としての活況と引き換えに、地域コミュニティとの絆が希薄化してしまった現実は否定できません。