インターネット上の掲示板やSNSでは、時折「ドラフト1位の期待を裏切った悲運の投手」「プロで通用しなかった選手」といった表層的な言葉で語られがちです。しかし、現場の取材を通じて見えてくるのは、そうした短絡的なレッテルとは正反対の「類まれな適応力と人間性」です。
多くのファンが抱く最大の誤解は、「引退後の辻内氏は野球界からフェードアウトした」という思い込みです。現実は全く異なります。引退直後の2014年、一般企業での研修を経て飛び込んだのは、当時まだ発展途上にあった日本女子プロ野球リーグでした。
女子プロ野球の現場において、辻内氏は自らのネームバリューを一切誇示することなく、グラウンド整備や用具運びまで選手と共に行いました。指導者として選手一人ひとりの骨格や筋力差を丹念に研究し、2016年から埼玉アストライアの女子プロ野球監督に就任すると、翌2017年にはチームを年間女王(総合優勝)へと導いたのです。
男子プロ野球出身者が女子選手を指導する難しさは球界でも広く知られていますが、辻内氏は上意下達の旧弊な指導ではなく、対話と科学的根拠を重視するマネジメントを徹底しました。「怪我で投げられなかった時間があるからこそ、選手の痛みが手に取るようにわかる」という彼の指導哲学は、決してネット上の「悲運のドラ1」という言葉で片付けられるものではありません。