麺屋どうげんぼうずを語る上で欠かせないのが、拠点移転の歴史です。同店は2010年代初頭、京王線・笹塚駅近くの甲州街道沿いで産声を上げました。カウンター主体の小規模な店舗ながら、提供されるラーメンの突き抜けた完成度と、店主の気さくな人柄が口コミで広がり、瞬く間に連日行列を作る人気店へと成長しました。
その後、多くのファンに惜しまれつつ笹塚の店舗を畳み、丸ノ内線・新中野駅近くの青梅街道沿い(鍋屋横丁周辺)へと移転を果たします。この移転劇に際して、一部のネット掲示板やSNSでは「経営不振による閉店ではないか」「トラブルがあったのではないか」といった根拠のない憶測が飛び交いました。しかし、実際の移転理由は全く異なるものでした。
移転の決定的な要因は、店舗建物の契約更新や老朽化に伴う物理的制約、そして仕込み環境のキャパシティ拡張にありました。笹塚時代の厨房設備では、仕込み量や仕上がりをさらに突き詰めることに限界が生じており、より広範な顧客層を受け入れ、独自のスープを安定して炊き上げるためのステップアップだったのです。新中野への移転後は席数も確保され、限定メニューの開発や丁寧な接客が一層研ぎ澄まされる結果となりました。突発的な休業や移転準備期間が「閉店したのではないか」という誤解を招いたものの、実際には進化を遂げるための戦略的転換であったといえます。