本作についてインターネット上で最も根強く流布している誤解が、「救いのない胸糞映画」「バッドエンドの極致」というレッテルです。確かに、初見のインパクトとしては強烈な喪失感が残るため、いわゆる鬱映画としての秒速5センチメートル 評判が一人歩きしやすい土壌があります。
しかし、新海誠監督自身の手による小説版『秒速5センチメートル』を精読すると、結末のトーンは映画版の印象よりも遥かに前向きであることが分かります。踏切で遮断機が上がり、振り返った先に誰もいなかった瞬間、貴樹は絶望して泣き崩れたわけではありません。彼はわずかに微笑み、踵を返して自分の足で歩き始めます。
彼を長年縛り続けていた「届かない手紙」や「見えない宇宙ロケット」のような呪縛が解け、「彼女が幸せであること」を確認できたからこそ、自分自身の人生を取り戻したのです。この結末を「破滅」と受け取るか「再生への第一歩」と受け取るかによって、本作の評価は180度変わります。