ディオが石仮面を被った動機は、単なる破滅願望や一時的な発狂ではありません。そこには綿密に張り巡らされた陰謀の瓦解と、生き残るための冷酷な損益計算が存在していました。
貧民街(スラム)出身のディオは、ジョースター家の養子となり莫大な遺産を独占するため、実父ダリオを衰弱死させたのと同一の毒薬を、養父であるジョージ・ジョースターⅠ世に長期間にわたって微量ずつ投与していました。しかし、ジョナサン・ジョースターがその謀略を察知。ジョナサンはロンドンの危険地帯「食屍鬼街(オウガーストリート)」へ単身乗り込んで解毒剤と確実な物証を入手し、暗黒街の首領ロバート・E・O・スピードワゴンを味方に付けて帰還します。
邸宅に戻ったディオを待っていたのは、病床のジョージ卿、証拠を突きつけるジョナサン、そして身柄を拘束すべく配置されたロンドン警視庁の警官隊でした。謀略が白日のもとに晒され、絞首刑による破滅が決定的となったその刹那、ディオが起死回生の脱出路として選択した手段こそが、古代アステカの遺物「石仮面」の封印解除でした。
この仮面は、人間の血を浴びると骨の針が飛び出し、脳の未知のツボを刺激して宿主を不死身の肉体を持つ吸血鬼へと変貌させる性質を持ちます。逮捕されて人間社会の法で裁かれるか、それとも人間性を放棄して超越者となり包囲網を血の海に変えるか。ディオにとって「人間をやめる」決断は、全能感を取り戻すための必然の選択肢だったのです。