実用的な危険防止に加え、日本古来の言霊(ことだま)信仰や言葉遊びが、この迷信に強い説得力を与えました。代表的なものが「世を詰める」という語源説です。
「夜に爪を切る(夜爪=よづめ)」という音は、自らの生涯・寿命を縮めることを意味する「世を詰める(よづめ)」と全く同じ響きを持ちます。不吉な言葉の重なりを極端に嫌った昔の人々は、語呂合わせを通じて「夜爪を切ると短命になる」と恐れ、固く禁じました。
歴史的な武士の勤務形態に由来する説も存在します。江戸時代の武士が夜間に城や屋敷を警備する役目を「夜詰(よづめ)」と呼びました。夜詰めの任務中は持ち場を離れることが許されず、仮に実家で親が危篤に陥っても駆けつけることができませんでした。この「夜詰め=親の死に目に会えない」という現実の境遇が、同音の「夜爪」と結びついて民間に浸透したという見立ても有力です。