芸能一家として知られる田中家の次男として生まれ、幼少期から表現という営みを身近に感じて育った背景は、彼にとって大きなアドバンテージであると同時に、常に比較や先入観という視線に晒される苛酷な環境でもあった。しかし、彼が選んだ道は、その看板に甘んじることでも逃避することでもなかった。泥臭く小劇場の舞台に立ち、一幕一幕の芝居に全身全霊を捧げることで、彼自身の名前を演劇界に知らしめていったのだ。
初期の出演作から見せていた鋭い感性と、役に憑依するかのようなリアリティ。それは一朝一夕に得られたものではなく、膨大な稽古時間と泥臭い下積みの賜物にほかならない。「誰かの弟」としてではなく「俳優・田中 彪」として評価されるに至ったプロセスには、過酷な演劇現場を生き抜いてきた男の誇りと覚悟が強く刻まれている。