ソーシャルメディアや知恵袋、愛犬家コミュニティの投稿を綿密に分析すると、口舐め行動をめぐる飼い主の深刻なジレンマが浮き彫りになります。
「仕事から帰宅した際、顔中を舐めて喜んでくれる姿を拒むと、愛犬が悲しそうな目をして部屋の隅にいじけてしまう」「拒絶することが愛犬への愛情否定に感じられて、感染症の怖さを知りつつも止められない」といった告白が多数寄せられています。動物を我が子のように溺愛するあまり、「擬人化による心理的同一視」が起こり、物理的な境界線を引くことに罪悪感を抱いてしまう構図が確認できます。
しかし、都内の夜間救急動物病院や臨床獣医師への取材では、全く異なる厳しい現実が語られます。
「飼い主さんの口を激しく舐める犬の診察を行うと、分離不安や環境ストレスによる強迫的な舐め癖を抱えている例が極めて多いのが実情です。飼い主さんは『こんなに私を愛してくれている』と受け取っていますが、犬側は興奮状態から抜け出せず、精神的な過負荷状態に陥っています。さらに、飼い主さんがカプノサイトファーガで入院して初めて、口舐めの習慣を獣医師に打ち明けるという悲劇的なケースも後を絶ちません」
愛情の確認作業として行われていたスキンシップが、実態としては犬の精神的緊張の表れであり、飼い主自身の生命をも脅かしていたという事実は、愛犬家にとって直視すべき現実です。