この曲には、従来のヒット曲のような派手なプロモーションが一切なかった。仕掛けたのはレコード会社ではなく、TikTokのレコメンドアルゴリズムだ。深夜に一人でスマホを見つめる孤独なユーザーのデータが解析され、まるで狙い澄ましたかのようにこの曲がタイムラインに流し込まれた。
音楽ジャーナリストの柴崎氏はこう分析する。「かつてのヒット曲は『みんなで歌えること』が価値だった。しかしこの曲は違う。『自分だけの秘密の歌』として消費されている。アルゴリズムが個人の孤独を検知し、そこにピンポイントでこのメロディを流し込む。現代の音楽ビジネスは、共感の最大公約数ではなく、孤独の極限値を狙うフェーズに入った」。