展示ブースの前にできた長蛇の列。それが、今年の「メゾン・エ・オブジェ」における最も象徴的な光景だった。人々が息をのんで見つめるのは、光の角度によって万華鏡のように表情を変える漆の器だ。一見すると極上のヴィンテージに見えるが、その骨格は3Dプリンターによって出力された植物由来のベースである。
この技術は、これまでの「手仕事こそが至高」という神話を心地よく裏切る。機械が作った完璧な対称性に、人間の手による不均一な漆の層が重なることで、かつてない深みが生まれるのだ。来場したフランス人コレクターは「これは単なる工芸品ではない。未来の哲学そのものだ」と興奮気味に語った。