細川たかしの人生を語る上で、決して避けて通れないのが下積み時代を支えた前妻・和子夫人の存在です。ふたりが歩んだ40年以上の歳月と、今回のシニア再婚による新たなパートナーシップには、時代背景と人生ステージの違いによる明確なコントラストが存在します。
和子夫人は、細川が札幌・すすきののクラブ歌手としてくすぶっていた時代からの戦友でした。1975年の『心のこり』での大ブレイク以前、生活費すらままならない極貧生活の中で細川を信じ続け、長男を育て上げました。2018年11月に和子夫人が病のため73歳で旅立った際、細川は記者会見で「身体の一部を引きちぎられたようだ」と涙を流し、その深い喪失感は数年間にわたって彼の歌声にも影を落としていました。
一方、新たな妻となった加美さんとの関係は、若き日の苦労を分かち合う関係とは異なり、「人生の黄昏時における知的な共生関係」です。長男の譲さんもすでに独立して大人の社会人となっており、父親が一人きりで暮らすリスクを誰よりも心配していました。父親の再婚に際して長男が「親父の残りの人生を支えてくれる人が現れて本当に良かった」と快諾したというエピソードは、家族間の心理的境界線が健全に保たれている証拠と言えます。