公開当時から現在に至るまで、インターネット上の掲示板やSNS、映画レビューコミュニティにおいて、『秒速5センチメートル』のラストシーンと主題歌は極めて激しい議論の的となってきました。
寄せられるネットの評判を検証すると、大きく二つの相反する極端な声に二分されている事実が浮かび上がります。
一方の主流派閥を形成しているのが、「トラウマ級の精神的ダメージを受ける」という痛烈な感想です。特に20代〜30代の男性層を中心に、「過去の初恋や失恋の古傷を無理やりこじ開けられる」「山崎まさよしの歌声が流れた瞬間、切なすぎて息ができなくなる」「鬱エンドすぎて数日間立ち直れなかった」という生々しい叫びが散見されます。劇中で貴樹が抜け殻のように社会生活を送り、恋人と別れ、心をすり減らしていく描写と歌詞のリンクが、あまりにも容赦ないリアリズムとして胸に突き刺さるためです。
しかしその一方で、人生経験を重ねた鑑賞者や批評家からは、「これは紛れもない救済と前進の物語である」という評価が根強く支持されています。ラストシーンの踏切で、通り過ぎる小田急線の電車が視界を遮り、電車が走り去った後に明里の姿はすでにありません。その瞬間、貴樹は微かに微笑み、踵を返して歩き出します。
この笑みについて、多くのファンが「過去の呪縛から解き放たれ、ようやく自分の足で前を向いて歩き始めた瞬間」と解釈しています。主題歌の激情的なサウンドと歌詞が全ての後悔を吸い上げ、踏切の遮断機が上がるとともに静寂が戻る構成は、観客にとってもまた「未練の浄化(カタルシス)」として機能しているのです。