「世界で最も美しい川はどこか」という問いに対して、旅慣れたナチュラリストや地理学者が真っ先に挙げるのが、南米コロンビアのシエラ・デ・ラ・マカレナ国立公園に位置するキャニョ・クリスタレス(Caño Cristales)である。「五色の川コロンビア」として世界中にその名を知られるこの川は、川底一面に自生する固有の水生植物「マカレニア・クラビゲラ(Macarenia clavigera)」が太陽光を浴びて真紅に染まり、水中の砂や苔、岩肌の黒、澄み切った青空の反射と重なり合うことで、絵の具を溶かしたような色彩美を現出させる。
一方、透明度という極致において「まるで船が宙に浮いて見える川」としてSNSを席巻したのが、スイス南部ティチーノ州を流れるヴェルツァスカ川(Verzasca River)だ。アルプスの氷河から溶け出した極低温の水が、数千年にわたって磨き上げられた巨大な花崗岩の渓谷を滑るように流れ落ちる。水深10メートル以上の深みであっても、底に沈む小石の輪郭やダイバーの影が水面と完全に切り離され、ボートが虚空に静止しているかのような非現実的な光景を創り出す。
さらに南米ブラジル内陸部、ボニートに位置するリオ・スクリ(Rio Sucuri)も外せない。世界トップクラスの透明度を誇るこの川は、石灰岩の地層深くで気の遠くなるような時間をかけて濾過された湧水が水源となっており、川底に広がる淡水藻の間を泳ぐ魚たちの姿が、まるで空中を飛んでいるかのようにクリアに視認できる。世界一綺麗な川という称号は、単一の基準ではなく、「色彩の豊かさ」と「極限の透明度」という異なるベクトルによって競い合われているのが現実だ。