リサイクルショップやフリマアプリで1万円前後のプレーヤーを見つけると、入門者ほど「これでレコードが聴ける」と即決しがちだ。しかし、ここに最初の落とし穴が存在する。ヴィンテージのレコードプレーヤーは現代のBluetoothスピーカーやアクティブスピーカーのように、コードを繋ぐだけで音が出るシンプルの極みではない。
最大の見落としが「フォノイコライザー」の有無である。カートリッジから出力される信号は極めて微小であり、RIAA特性と呼ばれる特殊なイコライジングと増幅を行わなければ、まともな音量と音質で再生できない。往年の名機にはフォノイコライザー内蔵レコードプレーヤーはほぼ存在せず、外付けのフォノアンプ(相場:1万〜3万円前後)やフォノ端子付きアンプを別途用意しなければ完全な無音状態に陥る。
さらに無視できないのがレコード針交換とカートリッジ寿命の現実だ。一般的にMM(ムービング・マグネット)カートリッジの針寿命は約300〜500時間とされている。中古市場に出回る個体に装着されている針が、前の持ち主によって何百時間酷使されたかは外見からは判別できない。摩耗し変形した針先(スタイラス)で愛聴盤をトレースすれば、盤面の溝そのものを不可逆的に削り取ってしまう。交換針の購入費用として、最低でも5,000円〜1万5,000円の追加出費を見込んでおく必要がある。
くわえて、トーンアームのインサイドフォースキャンセラーの固着や、針圧調整機構の狂い、アース線の断線による激しいハムノイズの発生など、レコードプレーヤー中古の注意点は多岐にわたる。「本体代金8,000円」の甘い誘惑の裏には、倍以上の整備費用が隠されている実態を忘れてはならない。