この議論において、ネット上で頻繁に見受けられる典型的な誤解が2つあります。論理の破綻を防ぐために知っておくべきポイントです。
誤解1:「東京都に県庁所在地を聞くこと自体が間違い」という言説
「東京都は『都』なのだから『県』ではない。したがって県庁所在地という言葉を使うこと自体が間違いであり、正しくは『都庁所在地』である」という主張です。言葉の厳密な定義としては一理あるように思えますが、公的な枠組みにおいては必ずしも不適切ではありません。
日本の地方自治法上、都道府県は包括的な「広域地方公共団体」として同格に位置づけられています。全国学力調査や統計データの一括集計、あるいは社会科の教育課程において「47都道府県庁所在地」と総称される場合、東京都庁の所在地を指して「県庁所在地」と呼ぶことは制度上も一般的表現として許容されています。言葉狩り的に「都庁所在地と言わなければ誤り」と断じるのは、過度な形式主義と言えます。
誤解2:「新宿区は市ではないから県庁所在地になれない」という言説
「県庁所在地は必ず『市』でなければならないため、区である新宿区は選ばれない」という見解も散見されます。しかし、これも制度の本質を見誤っています。
23区(特別区)は、2000年の地方分権一括法によって「基礎的な地方公共団体」として法的に市と同等の権限を大幅に付与されました。地方自治法上、特別区の区域に都庁が置かれること自体に何ら制約はありません。新宿区が教科書上で単独記載されないのは、特別区が市より格下だからではなく、「国土地理院や国際的な都市基準において、23区全体を合わせた東京23区(特別区部)をもって1つの巨大都市『東京』とみなす」という地図調製上の協定が存在するためです。