川昌の名を一躍全国区に押し上げた象徴的メニューが、ウナギを生で味わう「うなさし(うなぎの刺身)」です。しかし、魚の生食文化が極度に発達した日本において、なぜこれまで「ウナギの刺身」が一般的でなかったのでしょうか。そこには生物学的な明確な理由と、ネット上でもたびたび議論される「毒の噂」が存在します。
ウナギの血に含まれる毒素「イクチオヘモトキシン」の正体
ウナギやアナゴなどの淡水魚・海水魚の血液中には、「イクチオヘモトキシン(Ichthyohemotoxin)」と呼ばれるタンパク質毒素が含まれています。この毒素は、多量に経口摂取すると激しい下痢や嘔吐、麻痺を引き起こし、傷口や目に入ると強烈な炎症を起こす危険性を持っています。一般的なウナギ料理が「蒲焼」や「白焼き」のように必ず強火でしっかりと加熱調理されるのは、この毒素が約60度以上の熱で完全に熱変性し無毒化するという性質を持っているためです。
職人技による完全血抜きが生み出した「奇跡の生食」
では、なぜ川昌では生で提供できるのか。その真相は、長年培われた徹底的な個体管理と、1滴の血も身に残さない超高精度の血抜き技術にあります。心臓の鼓動を利用して短時間で完全に脱血させ、流水と独自の工程を重ねることで、身に毒素を一切残さない安全基準を確立しました。
保健所の厳しい検査と衛生基準をクリアした上で提供される「うなさし」は、薄造りに引かれ、透き通るような白身の輝きを放ちます。自家製のポン酢や紅葉おろし、ワサビで口に運ぶと、まず驚かされるのはフグやオコゼをも凌駕する力強い弾力と心地よい歯ごたえです。噛み締めるほどにウナギ本来の上品で濃厚な脂の甘みが広がり、川魚特有の泥臭さは皆無。この至高の食体験こそが、危険という先入観を抱えていた訪問者を一瞬で感動の虜にする決定的な理由です。