大西が自決現場の机上に遺した遺書は、白紙に墨書されたもので、特攻隊員の英霊に対する謝罪と、敗戦後の日本を担う若者たちへの遺訓の二通で構成されていました。
以下は、大西瀧治郎が遺した遺書の全文です。
【特攻隊の英霊に申す】 特攻隊の英霊に申す。
善く戦ひたり深謝す。
最後の勝利を信じつゝ肉弾として散りゆきたる諸士の英霊は、生前善く尽したるの自信を以て、永遠に神国護持の主神たり得べきも、
吾人の善く補佐せざりしが為、遂に国敗るゝに至りしは、職を執れる者として痛恨の極みなり。
茲に自ら死を以て旧部下の英霊とその遺族に謝せんとす。
次で一般青年学徒に告ぐ。
我が死にして、軽挙は厳に慎み、自重自愛を旨とし、
矜持を失はず、日本の復興と世界平和の為、粉骨砕身努力せんことを。
特攻隊の遺志を虚しくすること勿れ。
この遺書で特筆すべきは、軍上層部としての無念を部下に詫びるだけでなく、生き残った「一般青年学徒」に対して軽挙妄動を強く戒めている点です。敗戦の混乱に乗じて暴動や無謀な抵抗を起こすことなく、世界の平和と国の復興のために知性とエネルギーを注ぐよう命じたこのメッセージは、自暴自棄に陥りかけていた当時の若者たちの指針となりました。