ふじきみつ彦の名を全国のドラマファンに決定づけた記念碑的代表作が、2017年にスタートした『バイプレイヤーズ 〜もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら〜』(テレビ東京系)です。遠藤憲一、大杉漣、田口トモロヲ、寺島進、松重豊、光石研という、日本を代表する名バイプレイヤーたちが実名でシェアハウス生活を送るという前代未聞の企画において、ふじきみつ彦はメインの脚本陣としてシリーズのトーンを決定づけました。
制作発表や当時のメディアインタビューにおいて、制作陣は「おじさんたちがリビングでグダグダと雑談しているだけのシーンにこそ、人生の機微が宿る」と語っています。ふじきみつ彦は、実力派俳優たちのリアルなパブリックイメージと虚構のドラマ性をシームレスに行き来させ、演技派たちが思わず素の表情を覗かせるような絶妙な台詞回しを構築しました。この成功により、深夜ドラマの枠を超えた社会現象を巻き起こします。
さらにその筆致の深度を証明したのが、2021年のNHKよるドラ『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』です。お笑いコンビ・阿佐ヶ谷姉妹(木村美穂・渡辺江里子)のエッセイを原作に、血の繋がらない二人が六畳一間のアパートで過ごす日々を描いた本作は、第30回橋田賞やギャラクシー賞を受賞するなど各方面で絶賛を浴びました。
本作でふじきみつ彦が見せたのは、単なるモノマネ的な再現ドラマではなく、他者と共に生きることの歓びと息苦しさを同時に描き出す洞察力です。「近すぎると鬱陶しい、離れすぎると寂しい」という普遍的な人間関係の機微を、ピンクの衣装に身を包んだ二人の阿佐ヶ谷の風景の中に溶け込ませた筆力は、多くの批評家から「2020年代を代表するホームドラマの到達点」と称えられました。