昭和から平成、そして令和へと続く歴史の中で、主題歌『アンパンマンのマーチ』は異端の存在であり続けました。戦死した弟への追悼や自らの死生観が織り込まれたとされる歌詞は、当初、幼児番組のオープニングとしてはあまりに哲学的で暗すぎると受け止められた経緯があります。「何のために生まれて 何をして生きるのか」という直球の問いかけは、当時の常識を大きく揺るがしました。
当時、フレーベル館を中心とする児童文学・出版業界において、絵本版『あんぱんまん』が最初に出版された際も、教育関係者や評論家からは「グロテスクだ」「顔を食べるなど残酷すぎる」と猛烈な批判を浴びました。しかし、現場の保育士や子どもたち自身がその本質を直感的に見抜いたのです。綺麗事だけでは救えない現実の痛みに寄り添う物語は、業界の固定観念を根底から覆し、半世紀近く愛され続ける大ベストセラーへと駆け上がりました。