坊の唯一無二のキャラクター性を決定づけたのが、当時若干8歳(小学校2年生)だった俳優・神木隆之介氏の声の演技です。
スタジオジブリのプロデューサー・鈴木敏夫氏の手記によると、オーディション時に神木氏が見せたあどけなさと、子ども特有の直感的な表現力が宮崎監督の琴線に触れ、満場一致で抜擢されたと記録されています。大人の声優が演じる「計算された赤ちゃん声」では決して出せない、予測不能で無防備なトーンが、巨大な肉体と絶妙なギャップを生み出しました。
作中で放たれるセリフの数々は、坊の精神的変化を鮮やかにトレースしています。
- 「あそんでくれないと、なかちゃうぞ。えーんえーん」
自分の要求を通すために泣き真似を武器にする、初期の支配的で甘やかされた精神状態を象徴するフレーズ。 - 「おまえ、カラスめ」
銭婆の魔法で姿を変えられた湯婆婆の使い魔(ハエドリ)を見下しつつも、次第に相棒として受け入れていく過渡期の純朴さを示す言葉。 - 「ばあばのケチ。もうやめなよ」
物語終盤、千尋に対して冷酷な試練を課そうとする湯婆婆に対し、初めて客観的な視点から母親の横暴をたしなめた決定的セリフ。