東海第2の人口規模を誇る岐阜県に、なぜ一蘭は進出しないのか。この疑問を紐解くには、外食産業のサプライチェーンと一蘭独自の出店基準を理解する必要があります。
第1の壁は、「スープ・食材の品質保持と物流ルートの最適化」です。一蘭では、秘伝のたれや豚骨スープのレシピを知るのは世界で数名の専任職人のみとされ、福岡県糸島市にある「一蘭の森」などの自社生産拠点で一括管理されています。ここから各店舗へ専用の冷蔵・冷凍混載便で毎日定時配送を行うため、既存の配送幹線ルートから外れた単独出店は物流コストを跳ね上げます。愛知県内へ集中出店(ドミナント展開)することで配送効率を極限まで高めている現在、岐阜県内にポツンと1店舗だけを維持することは経営効率上、優先順位が下がってしまうのです。
第2の壁は、「夜間営業における客単価と深夜稼働率」です。一蘭の大きな強みは24時間営業や深夜の終夜営業による高い回転率ですが、岐阜市周辺の郊外ロードサイドは22時を過ぎると急速に通行量が減少するクルマ社会特有の夜間過疎が生じます。現在の「天然とんこつラーメン(創業以来)」の標準価格は1杯980円〜1,000円前後(替玉210円)に設定されており、競合する岐阜の有力ご当地ラーメン(岐阜タンメンや来来亭など)の深夜価格帯と比較した際、深夜帯に高い客席稼働率を維持できるかというハードルが立ちはだかります。
第3の壁は、「訪日外国人(インバウンド)観光客の集客動線」です。一蘭の主要収益源の1つは、アジア圏を中心とする訪日客の旺盛なインバウンド消費です。名古屋駅前や栄の店舗には連日外国人観光客の長蛇の列ができますが、高山や白川郷といった岐阜の観光地と名古屋・岐阜市街地では客の移動パターンが異なり、都市型店舗のような爆発的なインバウンド需要を岐阜平野部で見込むのは極めて困難です。