公式発表資料および当時の医療記録によると、大橋巨泉さんの直接の死因は急性呼吸不全でした。2016年7月12日午後9時29分、千葉県内の病院で妻の浅野順子さんらに見守られながら息を引き取りました。しかし、呼吸不全という病名はあくまで最終的な臨床的結果に過ぎず、その根底には足かけ11年におよぶ過酷を極めたがん闘病歴が存在していました。
巨泉さんとがんとの長い戦いは、2005年に発見された胃がんから幕を開けました。早期発見であったため胃の半分を摘出する手術を受け、無事に回復したかに見えましたが、病魔は執拗に彼の身体を蝕んでいきます。2013年には中咽頭がんが発覚。声帯を温存するために抗がん剤と放射線による過酷な治療を選択し、唾液が出なくなる後遺症や味覚障害に苦しみながらも不屈の精神で寛解を目指しました。
ところが2014年11月には肺への転移、さらに2015年5月には右縦隔リンパ節への転移が判明します。縦隔リンパ節のがん摘出手術は成功したものの、度重なる手術と放射線照射により巨泉さんの肺機能や基礎体力は著しく低下していました。80歳を超えてからの連続する大手術は、かつて恰幅の良かった彼の体重を50kg台、最終的には40kg台へと激減させていたのです。