旅行者やグルメファンの間で常に議論の的となるのが、「きじ 梅田スカイビル店の行列に並ぶ価値はあるのか」という問いです。結論から申し上げれば、「出汁文化と職人芸が融合した独自の食体験」を求めるなら、間違いなく並ぶ価値があります。一方で、「タイパ(タイムパフォーマンス)を最優先し、手早く大阪名物を平らげたい」と考えている方にとっては、過酷な待ち時間がストレスになる可能性も否定できません。
きじの看板メニューである「もだん焼き」は、他店で提供される広島風や一般的なモダン焼きとは根本的に構造が異なります。多くの店では生地の上に焼きそばを乗せて焼き上げますが、きじでは特製出汁を絡めて炒めた特製中華麺を、絶妙な火加減の溶き卵でふんわりとまとめ上げ、最後に薄い生地と合わせます。口に運んだ瞬間に広がるのは、重たい小麦粉感ではなく、半熟卵のまろやかさと芳醇な出汁の風味、そして香ばしいソースの三重奏です。現場で取材した常連客も「粉もんというよりは、極上の卵・麺料理を食べている感覚。この食感は他では絶対に味わえない」と語ります。
しかし、その高いクオリティを支えているのが「注文を受けてから一枚一枚、職人が目の前の鉄板で丁寧に焼き上げる」という頑ななこだわりです。当然ながら調理には一定の時間を要し、客席数もカウンターとテーブルを合わせて約20〜25席と小規模なため、回転率は決して高くありません。ピーク時には待ち時間が60分から90分に及ぶことも日常茶飯事であり、このタイムコストを受け入れられるかどうかが、満足度を分ける決定的な分岐点となります。