なぜこのような曖昧な併記ルールが現代まで残されているのでしょうか。その背景には、日本語の音韻変化と歴史的仮名遣いの深い歴史が存在します。
もともと古語において「つ」に濁点がついた「づ」と、「す」に濁点がついた「ず」は、明確に異なる発音として区別されていました。これらは「じ・ず・ぢ・づ」の書き分け問題として知られる四つ仮名表記の典型例です。古典文法における副助詞の起源をたどると、「ひとつづつ」「すこしづつ」のように、接尾語的な性格から「づつ」と表記するのが正統な歴史的仮名遣いでした。
しかし室町時代以降、発音上での「ず」と「づ」の区別が失われ、耳で聞く音としては完全に同一化しました。戦後の昭和21年(1946年)、内閣告示された「現代かなづかい」において、文部省(現・文部科学省)は発音通りの表記を原則とする大胆な国語改革を断行します。この際、助詞ずつづつ文部科学省の指針整理によって、「現代の発音に従って『ずつ』と書く」という方針が打ち出されました。
ところが、長年「づつ」の表記に親しんできた文学者や知識人からの反発は根強く、表記の激変を緩和するための妥協案として「づつと書いてもよい」という許容規定が現在まで残されることになりました。