「高度医療機関は、最後の防波堤でなければならない」。歴代の現場指揮官であり、小児神経学の権威としても知られる岡明総長は、折に触れてその信念を口にしてきた。軽症の患児が押し寄せてしまえば、数分を争う超急性期の処置が滞り、本当に助かるはずの命が零れ落ちてしまうからだ。
現場の小児集中治療室では、昼夜を分かたず人工呼吸器のアラームが鳴り響く。医師や看護師の目元には濃い隈が刻まれ、それでもカルテに向き合う眼差しは驚くほど鋭い。高度専門医療の最前線とは、奇跡のドラマが連発する華やかなステージではない。数値をミリ単位で調整し、微かな脈拍の揺らぎに全神経を注ぎ続ける、泥臭く地道な戦場そのものなのだ。