配偶者という身分が最も強大な効力を発揮するのは、死別という極限の状況においてです。ここでは法律婚と事実婚の間に、救済の余地がないほどの断絶が横たわっています。
配偶者の法定相続分と税制上の特権
民法上、戸籍上の配偶者は常に法定相続人となります。相続割合(法定相続分)は、他の相続人の構成に応じて以下のように手厚く保証されています。
- 配偶者と子:配偶者 1/2、子 1/2
- 配偶者と直系尊属(親):配偶者 2/3、親 1/3
- 配偶者と兄弟姉妹:配偶者 3/4、兄弟姉妹 1/4
さらに、相続税には「配偶者の税額軽減」が用意されており、遺産総額1億6,000万円まで、あるいは法定相続分相当額までであれば、相続税が1円もかかりません。配偶者短期居住権・配偶者居住権の創設により、長年住み慣れた自宅の居住権も強固に保護されます。
対照的に、事実婚・内縁のパートナーには法定相続分が一切認められません。どれだけ献身的に介護を尽くし生活を支えていても、法律上の相続権は0%です。生前に公正証書遺言を残していなければ、故人の資産は疎遠だった親族に全て渡り、二人が暮らした自宅から退去を迫られる事例が現在も後を絶ちません。
配偶者の遺族年金受給要件:事実婚の救済ルート
一方で、残された配偶者の生活を保障する「遺族年金」については、事実婚にも門戸が開かれています。国民年金法および厚生年金保険法における配偶者には、「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」が含まれると明記されているためです。
ただし、自動的に支給されるわけではありません。日本年金機構の厳格な審査をクリアするために、以下の3重のハードルをクリアする必要があります。
- 内縁関係の成立証明:住民票で「妻(未届)」として長期間同一世帯であったか、または民生委員や親族の第三者証明書を提出できること。
- 生計維持関係の立証:亡くなった配偶者によって生計を維持されていたこと(前年の年収が850万円未満、または所得655.5万円未満であること)。
- 重婚的内縁関係の排除:亡くなった側に別の戸籍上の配偶者が存在する場合、その法律婚関係が完全に破綻・形骸化していた客観的証拠を提示できること。