名門として知られる東京慈恵会医科大学での学生生活は、臨床医療の厳しさを叩き込まれる日々でもあった。生と死が背中合わせの現場で学んだ確かな知見。一方で、街頭の若者たちが抱える言葉にならない生きづらさや心の揺らぎにも、彼女の眼差しは注がれていた。
ストリートの現実とアカデミックな医学研究。この二つの世界を往復するなかで、彼女が専攻として選んだのが精神医学だった。理論や教科書通りのマニュアルだけでは救いきれない人間の複雑な心理を、解剖するように紐解くアプローチ。この時期に培われた視点こそが、後に彼女を稀代の執筆家へと押し上げる原動力となったのである。