天地返しの際に蓋を開けて最もショックを受けるのが、「表面に広がる白い物体」を目撃した瞬間です。しかし、慌てて全体を廃棄してはいけません。その多くは人体に害のない酵母菌の一種です。
産膜酵母と白カビの決定的な見分け方
表面に発生する白い物質には、主に「産膜酵母(さんまくこうぼ)」と「好気性カビ(白カビ・青カビ等)」の2種類があります。
産膜酵母の特徴:
表面に薄いビニールやちりめん状のシワのような白い膜が張っている状態です。胞子のようにモコモコと毛羽立っておらず、平面的に広がります。香りはシンナー臭や強いエステル臭(漬物のような発酵臭)がします。これは醤油や味噌などの高塩分環境を好む酵母菌で、毒素は生み出しません。風味を損なう原因にはなるため、表面を1〜2ミリ程度スプーンで薄く削ぎ落とせば、下の味噌は全く問題なく食べられます。
カビ(白カビ・青カビ・黒カビ)の特徴:
綿毛のようにふわふわと立体的に盛り上がっていたり、胞子状に点々と斑点を作っている場合はカビです。白以外にも青緑色や黒色、赤色を帯びることがあります。臭いもホコリっぽいカビ臭が漂います。カビを発見した場合は、菌糸が入り込んでいる可能性があるため、カビの生えている部分を中心に深さ1〜2センチ程度、広めにスプーンでくり抜いて除去します。削り取った後の断面と容器の側面にアルコールスプレーを吹きかけ、キッチンペーパーで拭き取ればリカバリー可能です。
重石を外すタイミングはいつか?
仕込み初期には、味噌から水分(たまり)を早く引き上げ、内部の隙間を押し潰してカビを防ぐために「味噌の重量の20%〜30%程度」の重石を乗せるのが一般的です。
重石を外す(または軽くする)ベストタイミングは、まさにこの「夏の天地返し」のタイミングです。
梅雨明けの時点で表面にしっかりとたまり醤油が上がっていれば、重石の初期の役割は完了しています。天地返し以降も重い石を乗せ続けると、水分が抜けすぎて味噌がパサパサに固くなったり、旨味エキスであるたまりが溢れ出してしまう原因になります。天地返し後は重石を完全に外すか、乗せるとしても元の重さの半分以下(500g程度の軽いもの)に減らすのが正しい管理方法です。