勉強中に音楽を聴くべきか否かという議論において、脳科学の領域では「作業内容と音の性質の相性」が決定打になると結論づけられています。人間の脳内で情報処理を担うワーキングメモリ(作業記憶)には容量限界があり、特に言語情報を処理する「音韻ループ」は、外部から入ってくる言語音に極めて強く反応します。
イギリスの認知心理学者アラン・バドリーらの研究をはじめとする複数の学術実験では、母国語や意味のわかる外国語の歌詞が含まれる楽曲を聴きながら読解や暗記を行った場合、無音環境に比べて記憶定着率や作業正確性が約30〜40%低下する「無関連音効果(Irrelevant Sound Effect)」が確認されています。脳が自動的に歌詞の意味を解析しようとしてリソースを奪われ、勉強内容の処理が後回しになるためです。
一方で、心理学における「ヤーキーズ・ドットソンの法則」が示す通り、人間の作業効率は緊張が低すぎても(退屈・眠気)、高すぎても(過度のストレス)低下し、中程度の最適な覚醒水準でピークに達します。退屈になりがちな単純計算や単語の書き取りにおいて、適度なテンポのインストゥルメンタル音楽はドーパミンの分泌を促し、作業興奮を引き出す起爆剤として機能します。