吉岡秀隆『ラストソング』の真実と現在|本木雅弘と魅せた伝説の名作

吉岡秀隆『ラストソング』の真実と現在|本木雅弘と魅せた伝説の名作

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1994年2月に公開された映画『ラストソング』は、当時の日本映画界において極めて異彩を放つ野心作でした。監督を務めたのは、テレビドラマ『北の国から』で国民的な演出手法を確立した杉田成道。脚本は人間の暗部と情念を描かせたら右に出る者がいない野沢尚が手掛けました。この盤石の布陣が挑んだのは、きらびやかな音楽業界の表舞台と、その裏で急速に消費されていく若者たちの剥き出しの自我です。

本作の最大の推進力となったのが、映画『ラストソング』における吉岡秀隆と本木雅弘の初共演でした。シブがき隊を解散後、本格的な演技派俳優へと舵を切っていた本木雅弘が演じたのは、圧倒的なカリスマ性と美貌を持ちながらも喉の不調と精神的重圧に苛まれるボーカリスト・修吉。一方、吉岡秀隆が演じたのは、内向的でありながら類まれな音楽的才能を秘めたギタリスト兼ソングライターの稲葉でした。

撮影現場において、杉田監督はあえて二人の緊張感を煽るような演出を徹底したと当時の映画誌インタビューで記録されています。吉岡秀隆は長年演じてきた「黒板純」という絶対的なパブリックイメージからの脱皮を求められ、本木雅弘はアイドル出身というレッテルを完全に吹き飛ばす鬼気迫る表現力を要求されました。さらに、二人の間で揺れ動く女性マネージャー役として吉岡秀隆と安田成美の共演が実現。安田成美が演じた美津代の存在が、男二人の危うい才能の共鳴と衝突をより生々しい愛憎劇へと昇華させました。

そして本作を不朽の名作たらしめている最大の要因が、主題歌であり劇中歌である楽曲「ラストソング」の存在です。この楽曲は映画のために外部の職業作家があてがったものではなく、吉岡秀隆自身が作詞・作曲を手掛けたという奇跡的な誕生秘話を持っています。当時、公私ともに深い親交のあった尾崎豊の急逝という深い喪失感を抱えていた吉岡秀隆が、自分自身の生きる痛みと音楽への純粋な祈りを込めて紡ぎ出したメロディ。アレンジャーには井上陽水や安全地帯を手掛けた名匠・星勝を迎え、映画の虚構を突き破る圧倒的な真実味を獲得するに至ったのです。

鈴木 陽菜
著者

鈴木 陽菜

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