歴代ポッキーCM史の中で、最も爆発的なインパクトを残したトピックといえば、2006年秋に放映が開始された新垣結衣の「ポッキーダンス」シリーズです。当時、江崎グリコが打ち出したのは、従来の静的なイメージ広告を覆す「はじける笑顔と激しいリズム」というアプローチでした。
CMソングに起用されたのは、ORANGE RANGEの「DANCE2 feat. ソイソース」。エレクトロとヒップホップが融合したアップテンポなビートに乗り、黄色いTシャツや制服姿の新垣結衣が、両手に持ったポッキーをスティックに見立ててステップを踏む映像は、テレビ画面から飛び出してくるかのような躍動感に満ちていました。
振付を担当したのは、数々の名作CMで斬新なムーヴメントを生み出してきたコレオグラファー・香瑠鼓(かおるこ)。計算されたキャッチーさと、素人が真似したくなる絶妙な「抜け感」が同居した振付は、当時のティーン層の心を一瞬で捉えました。関係者の証言や当時のインタビューによると、新垣本人は撮影前、決してダンスが得意ではなかったと明かしています。しかし、何テイクも重ねる中で見せた「照れを捨てて全力で楽しむ姿」と、ふとした瞬間にこぼれ出る天真爛漫な笑顔がカメラに焼き付けられ、それが視聴者の心を激しく揺さぶる結果となったのです。
このCMが放映されるやいなや、当時の動画投稿サイト黎明期やブログコミュニティには「あの可愛い女の子は誰だ」という声が殺到。CM好感度ランキングで月間・年間ともに首位を獲得し、彼女は一躍トップ女優への階段を一気に駆け上がることになりました。「ポッキーダンス」は、現代のTikTokやInstagramリールにおける「音源×ダンス」バイラルの原型を、20年近くも前に完璧な形で提示していたと言えます。