「小鳥遊(たかなし)」や「月見里(やまなし)」といった名字は、クイズ番組の定番としても親しまれている。「鷹がいないから小鳥が遊べる」「山がないから月が見える」という風流な言葉遊び、いわゆる“とんち”から生まれたとされるものだ。
人名学や民俗学の視点からこれらを分析すると、単なる冗談ではなく、当時の人々の自然観や言葉に対する信仰(言霊)が色濃く反映されていることがわかる。過酷な自然環境を鎮めるための祈りや、縁起を担ぐための意図的な当て字。文字を持たなかった時代の古い地名に、明治期の戸籍整備時に役人が漢字を当てはめた結果生まれた難読姓も少なくない。
地元の人間しか読めない山間部の小字(こあざ)がそのまま苗字になった例も多く、文字の配列そのものが地域の古代史を雄弁に物語っている。