シコルスキーの強さを語る上で、絶対に外せないのが常軌を逸した「ピンチ力」だ。コインを指先で折り曲げるどころの話ではない。100メートルを超えるロシアのミサイル発射基地のコンクリート壁を、ミリ単位の凹凸だけを手がかりに素手で登攀したシーンは、板垣恵介の描くリアリズムと誇張の絶妙な交差点として語り草になっている。
人体構造の限界を超越した中指と人差し指の関節力。それは打撃においても凶悪な武器として機能した。ナックルによる貫手のような刺突は、対戦相手の皮膚を裂き、肉を抉る。空手やボクシングといった既存の格闘技の体系を根底からあざ笑うかのような理不尽な破壊衝動こそが、彼の真骨頂だった。