社会現象を巻き起こしたベストセラーが映画化された際、日本映画界に新たな金字塔が打ち立てられた。松竹が製作・配給を手がけた映画『九十歳。何がめでたい』である。主演の草笛光子が実年齢と同じ90歳で佐藤愛子を怪演したことも話題を呼んだが、観客の心を掴んで離さなかったのは、娘・響子役を演じた真矢ミキの存在感だった。
真矢ミキがスクリーンで見せたのは、母の理不尽な要求に眉をひそめながらも、決して見捨てられない娘のリアルな葛藤だ。劇中で繰り広げられる怒号と笑いの応酬は、杉山響子本人の証言やエピソードが色濃く反映されたものだった。現場を訪れた響子自身が「そっくりで笑ってしまう」と漏らしたほど、母娘の空気感は見事に再現されていた。
ただの美談では終わらせない。親子の間に渦巻く苛立ちや諦念、そして切っても切れない情愛のグラデーションを、真矢ミキと草笛光子のタッグが見事にスクリーンへ焼き付けた。