下鳥直之氏の名を語る上で欠かせないのが、メンズファッションブランド「VICTIM(ヴィクティム)」の存在だ。2000年代初頭、裏原宿を中心としたストリートカルチャーの全盛期に誕生したこのブランドは、アメリカンカジュアルをベースにしつつも、クリーンで都会的なエッセンスを落とし込んだリアルクローズとして若者から圧倒的な支持を集めた。
下鳥氏はモデルとしての活動を経て、デザインから生産管理、卸売までを自らの手で切り拓いていった。彼が代表を務める「有限会社ウィン」は、目先のトレンドに左右されることなく、着心地や細部のディテールに徹底してこだわるモノづくりを貫いてきた。流行が目まぐるしく移り変わり、多くのドメスティックブランドが淘汰されていくなかで、同ブランドが今なお根強いファンコミュニティを維持し続けている理由は、まさにこの愚直なまでのクラフトマンシップにある。
近年ではコレクションの発表形態も進化し、ECサイトとの連動や受注生産モデルの最適化など、デジタル時代に即した持続可能なアパレル経営を実践。下鳥氏はデザイナーとしての感性を研ぎ澄ませながらも、冷徹なビジネス感覚を併せ持つ稀有なクリエイターとして業界内で確固たる地位を守っている。