初めて豊橋を訪れる旅行者が最も陥りやすい過ちが、「食べる前に全体を豪快にかき混ぜてしまう」ことだ。これをやってしまうと、計算された二段階の味覚グラデーションが一瞬で崩壊し、単なるカレー雑炊になってしまう。地元住民が推奨する正しい食べ方のステップは明確だ。
まずは上層のうどんを純粋に味わう。自家製のモチモチとした麺に出汁の効いたカレールーを絡め、添えられた具材の旨味を噛み締める。この段階では、箸を丼の半分より深く入れてはならない。麺をあらかた食べ終えたところで、ようやく箸とレンゲを丼底へと沈める。すると、カレールーの熱をほどよく受け止めたとろろご飯が出現し、濃厚なカレーリゾットのような味わいへと自然に変貌を遂げる。
かつて情報番組でグルメリポーターの彦摩呂が「味の玉手箱や!」と叫んだような、劇的な味のトランスフォーメーションを最後の一口まで体感するのが鉄則だ。