日常的に使われている「ひき肉」と「ミンチ」ですが、両者の分水嶺は日本列島の東西における食文化と語彙の定着過程にあります。
まず語源を紐解くと、ミンチの語源は英語の動詞「mince(細かく切り刻む、細分化する)」に由来します。幕末から明治初期にかけて西洋料理が日本に伝来した際、細かく刻んだ肉を指す「minced meat(ミンスミート)」という言葉が同時に入ってきました。この外来語が口語として短縮され、「ミンチ」というカタカナ語として定着した経緯があります。
一方の「ひき肉」は、肉を細かく加工する「挽く(ひく)」という日本語の動詞から生まれた大和言葉です。食文化の調査データや精肉流通業界のヒアリングによると、東日本では「ひき肉」、関西をはじめとする西日本エリアでは「ミンチ」という呼称が圧倒的なシェアを占めています。
この地域差は揚げ物の呼称にも顕著に現れています。いわゆるメンチカツとミンチカツの歴史を辿ると、明治20年代に東京・浅草の洋食店「三笠バル」が「ミンスミートカツレツ」を販売した際、聞き間違いや語感の訛りから「メンチカツ」として関東一円に普及しました。対して関西では、すでに定着していた「ミンチ」という言葉をそのまま使い、「ミンチカツ」として親しまれ続けています。