極東国際軍事裁判において、国家元首であった昭和天皇が被告席に座ることはありませんでした。この東京裁判不起訴理由の根底にあったのは、連合国軍最高司令官ダグラス・マッカーサー率いるGHQ免責判断です。
終戦直後、オーストラリアやソ連など一部の連合国は天皇の戦犯起訴を強硬に主張していました。しかし、マッカーサーは天皇を訴追・処刑した場合、日本全土で激しいゲリラ戦や暴動が発生し、占領統治に少なくとも数十万人規模の追加兵力が必要になると本国(アメリカ政府)へ打電して警告しました。台頭するソ連との冷戦構造を見据え、日本を共産主義に対する防波堤として迅速に復興させるため、天皇の権威を利用した間接統治が不可欠と結論づけられたのです。
この方針を決定づけた契機の一つが、1945年9月27日に行われた第1回マッカーサー会見でした。マッカーサーの回想録によれば、昭和天皇は自らの保身を一切求めず、「戦争に伴う全責任は私にある。私自身はどうなっても構わないから、国民を飢餓から救ってほしい」という趣旨を申し出たと記録されています。この会見を通じてマッカーサーは天皇の道義的姿勢を高く評価し、天皇制の維持と訴追回避への確信を深めました。