カウンターに立つのは、店主の辻佐代子氏。彼女が手網焙煎からスタートさせ、研ぎ澄ませてきた自家焙煎珈琲は、力強さと透明感を兼ね備えた驚くべき味わいを持つ。豆の状態を見極め、湯の落ちるスピードをミリ単位でコントロールする手さばきには、長年の経験に裏打ちされた無駄のない美しさが宿る。
深煎りのコクがありながら、後味には雑味が一切残らない。一口含むと、心地よい苦味の奥からキャラメルのような甘みがふわりと広がる。辻氏との飾らない会話も、この店の欠かせないエッセンスだ。天候や気温、その日の客の表情に合わせて絶妙な温度感で淹れられる一杯は、喉を潤す以上の満足感をもたらしてくれる。