なぜここまで焼き方で味が激変するのか。その鍵を握るのが、三大旨味成分の一つである「グアニル酸」だ。
日本きのこ学会の学術データや研究報告によると、生椎茸に含まれるグアニル酸は、60℃から70℃の温度帯で酵素が働くことによって爆発的に生成される。強火で一気に焦がしてしまうと酵素が働く前に失活し、弱火すぎると水分だけが抜けていく。中火でじっくりと温度を上げることが、旨味を極限まで引き出す科学的アプローチなのだ。
また、全国農業協同組合連合会(JA全農)の広報部がSNSで発信する椎茸の調理アドバイスでも、「カサの内側に溜まった水分は旨味の結晶なので一滴もこぼさずに味わってほしい」と繰り返し呼びかけられている。生産と科学の両サイドから見ても、ヒダを上にしてじっくり熱を通す手法は完全に理にかなっている。