「どんな手を使っても勝てばいい」を信条とする型破りな主人公。原作の持つ荒唐無稽さを生身の人間が演じることには、常に大きなリスクがつきまとう。滑稽になりすぎれば物語は崩壊し、リアルに寄せすぎれば原作の爽快感が失われる。その危うい綱渡りを、賀来賢人は驚異的な身体能力と緻密な演技設計で見事に渡りきった。
特筆すべきは、徹底的に計算された「間の取り方」だ。セリフを発する前の0コンマ数秒の静寂、視線の配り方、手足の震わせ方に至るまで、徹底的な自己演出が施されていた。単なる道化ではなく、根底に確固たる男の美学を滲ませることで、三橋貴志は子どもから大人まで愛される稀代のダークヒーローとして結実した。