鬼殺隊の隊士が手にする「日輪刀」は、持ち主の適性によって刀身の色が変化することから「色変わりの刀」と呼ばれます。しかし、炭治郎が初めて刀を手にした際、刀身は前例が極めて少ない「漆黒」へと変色しました。
育手の鱗滝や刀鍛冶の鋼鐵塚蛍も驚きを隠せなかったこの現象について、作中初期では「黒刀を持つ剣士は出世できない」「どの系統を極めればよいか分からず命を落とす」という不吉な迷信が語られていました。しかし、物語が進むにつれて判明したのは正反対の真実です。黒はすべての光を吸収する色であり、すべての呼吸の源流である「日の呼吸(ヒノカミ神楽)」に適性を持つ剣士だけが発現させる特別な色だったのです。かつて無惨と上弦の鬼たちが「日の呼吸」の使い手を根絶やしにするため、黒刀を持つ剣士を優先して抹殺してきた歴史が、「黒刀は出世できない」という悲運の伝承へと歪められていただけでした。
もう一つの重大な転換点が、炭治郎の額に現れた「痣(あざ)」の覚醒です。もともと幼少期に弟を火鉢の転倒から庇って負った火傷の痕、そして最終選別の手鬼戦で負傷した傷痕でしたが、遊郭編の妓夫太郎戦において極限の怒りと集中に達した瞬間、炎のような形状の「痣」へと変容を遂げました。
産屋敷家および柱合会議の記録によると、痣の発現には明確な生体条件が存在します。「心拍数が200以上」「体温が39度以上」に達する極限の危機に瀕し、なおかつ強靭な精神力で肉体の崩壊を耐え抜いた者だけに現れるとされています。そして、始まりの呼吸の剣士と同じく「一人が痣を発現させると、周囲の仲間にも共鳴して痣が現れる」という性質を持っており、炭治郎の覚醒が霞柱・時透無一郎や恋柱・甘露寺蜜璃、ひいては全柱へと波及する引き金となりました。ただし、この痣は生命エネルギーの前借りであり、「25歳を迎える前に命を落とす」という過酷な代償を伴う諸刃の剣でもあります。