警察の取り調べに対し、田中被告と大東氏の個人的なトラブルや面識は一切確認されていません。生活圏も接点もない暴力団幹部が凶行に及んだ背景には、第三者による依頼、すなわち「王将社長射殺の理由」となる重大な利権対立が存在したと考えざるを得ません。
この謎を解く最大の鍵と目されているのが、事件後の2016年3月に王将フードサービスが公表した「第三者委員会報告書」の存在です。社外の弁護士らで構成された調査委員会がまとめたこの報告書には、創業家時代から長年にわたって続いていた「特定の外部グループ」との極めて不透明かつ異常な巨額取引の実態が克明に記されていました。
報告書によると、餃子の王将は1995年から2005年頃にかけて、福岡県内の不動産会社やゴルフ場開発会社などを経営する特定の企業経営者(報告書内では「A氏」と表記)とその関連企業に対し、合計約260億円に上る不適切な資金調達や不動産売買、融資を行っていました。バブル崩壊後の混乱期において、創業家が個人的な借財の整理や資金繰りを巡ってこの外部勢力に依存し、その過程で巨額の会社資産が流出していったとされています。
さらに深刻だったのは、その投じられた約260億円のうち、約170億円が回収不能(焦げ付き)のまま損失処理されていた点です。東証一部(当時)上場企業としてコンプライアンスの刷新が急務となる中、2000年に社長に就任した大東隆行氏は、まさにこの「負の遺産」の清算に真正面からメスを入れようとしていました。大東氏は社内改革を断行し、不透明な資金の回収を試みるとともに、外部勢力からの不当要求や継続的な利益供与を完全に断ち切る方針を固めていたと報じられています。
暴力団関係者や裏社会と繋がるフィクサーにとって、王将はかつて莫大な資金を引き出せる打ち出の小槌でした。大東氏が推進した「過去との完全な決別」は、既得権益を奪われる外部グループにとって看過できない事態であり、これが大東氏暗殺という最悪の凶行を引き起こす引き金になったという見方が、現在最も有力な動機とされています。