「狂気路線」の象徴とも言えるのが、1991年にチキンラーメンのキャラクターとして誕生した「ひよこちゃん」の激変です。つぶらな瞳と丸みを帯びたフォルムで、長年サンリオ的な癒やしの象徴として愛されてきたひよこちゃんですが、2018年4月、突如として公式Twitterに「やってられっか!」の殴り書きとともに辞表を叩きつける画像を投稿しました。
この事件を契機に、ブランド誕生60周年を迎えたチキンラーメンは「アクマのキムラー」を発売。ひよこちゃんは悪魔召喚の儀式によって獰猛な怪獣「アクマひよこ」へと変貌を遂げ、口から業火を吐き散らすハードコアなビジュアルが全国の店頭とテレビ画面をジャックしました。
関係者への取材や当時のプロモーション展開から見えてくるのは、日清食品が作り上げた精緻な「ひよこちゃんの裏設定と感情の解放」です。長年「良い子」「優等生」を演じ続けさせられてきたキャラクターに、人間臭いストレスや鬱屈を投影させることで、現代社会のサラリーマンや学生が抱えるフラストレーションと見事にシンクロさせました。可愛らしいマスコットが突如としてタガを外す落差は、ブラックユーモアを好むネットカルチャーと抜群の親和性を発揮し、単なるマスコットを超えた「自立したバイラルメディア」へと進化を遂げたのです。